Story

2011年のクリスマス。私たちは暮らしていたワシントンから車を走らせ、保護犬団体に紹介してもらったバージニアの家族のもとを訪ねました。ドアが開くと、小さな男の子と子犬がなかよくサンドイッチを食べています。「Juju」男の子が子犬を呼びました。

Jujuは、保護犬のお母さんから生まれました。保護されたときはまだお腹にいたから辛い思いはしてないけれど、どことなくやさしく目が潤んでいるのは、お母さんの心うちをお腹で感じていたからかもしれません。

もらわれていくJujuをなでながら男の子はいいました。「名前変わっちゃうの?」「変わらないよ」そういい残し、生後2ヶ月のJujuとワシントンに戻った私たちは、いろんなところへ散歩にでかけ、いろんなものを一緒に見ました。
そう、JujuはいつだってJujuのままだよ。

日に日に大きくなるJujuと、ある日、いつものように近くの山を散歩していると道の向こうから黒人男性が歩いてきました。嬉しくてシッポを振るJuju。でも男性は怯えています。「あなたにとっては可愛い犬でも、僕にとってはそうじゃない」。こわおもてピットブルのミックスなのは確かだけれど、Jujuがおっとりした性格で、フレンドリーなこと、どうしたら伝わるかな。

子どものときから手を動かしてものを作ることが好きで、おとなになってからは靴作りを仕事にしていた私はあれこれ考えた末、身近にあった革や糸でJujuの首もとをに飾るガーランド・カラー※を作りました。ちょうど、Jujuの一歳の誕生日のことです。

あれから十数年、ガーランド・カラーをハンドメイドしてきました。ひと針、ひと針、革を縫う作業は力を使いとても根気がいりますが、毎日続けてこれたのは完成を心待ちにしてくれるみんながいてくれたお陰です。

この広い世界の街々、山々。
くびもとを飾ったガーランドカラーですれちがう人と犬が笑みをかわせますように。

※ガーランド・カラー: 花冠・花輪の意。いつも側にいてくれるパートナーへの感謝のしるしの王冠を。そんな思いを込めて名づけました。

Ikuko Ogiwara 子どもの頃は絵本の世界を粘土で再現するのが好きで、手を動かして素敵なものをつくる大人に憧れを抱く。大学では彫刻を専攻。卒業後、靴作りの教室で革の質感が粘土に似ていることから惹き込まれ、英国式ハンドソーンウェルテッド(昔ながらの手作業による靴の製法)を学ぶ。日米で個展を開き、手縫いの靴やバックを制作。2011年、愛犬ジュジュとの出会いを機にガーランドカラーの制作を開始。幼少期からの愛称「ikoyan / イコヤン」で活動を続ける。